AIに記事を頼む前に。発言・事実・判断を渡す「材料シート」
AIに記事を頼むと、読みやすいのに「誰の話なのか」が見えない原稿が返ってくることがあります。書き直しを始める前に、取材や作業で得た材料を渡せていたか確認してみませんか。
発信・制作の実践ガイド
すでにある発言や資料を、記事の目的に合わせて仕分ける工程です。HITORIBAでは、体験を引き出す質問と公開前の点検を別の記事で扱いました。今回はその間にある、集めた材料をAIへ渡す準備を一枚にまとめます。
まず、この記事の仕事を一文にする
「AIについて書く」はテーマです。下書きの判断基準としては広すぎます。誰が読み、読後に何を判断できればよいかまで書きます。
個人で記事を作る人が、集めた発言と資料をAIに渡す前に、事実・自分の判断・未確認事項に分けられるようにする。
下書きが広がったら、この一文に戻ります。読者に必要な説明か、別の記事に回す話かを決めるためです。
素材を「事実」「判断」「未確認」に分ける
材料を長く貼るだけでは、発言と推測の境目が消えます。まず三つに分けます。
| 扱い | 入れるもの | AIへの指示 |
|---|---|---|
| 事実 | 実際の発言、確認した画面、日付、公式資料で照合した仕様 | 元の意味を変えずに使う。出所を残す |
| 判断 | 何を重要と考えたか、どの案を採用したか | 筆者の見解として書く。測定結果のように扱わない |
| 未確認 | 裏取りしていない数字、伝聞、公開許可を得ていない素材 | 断定して使わず、確認待ちとして戻す |
たとえばHITORIBAの「原稿の修正を渡す4つのメモ」には、「確認時間が半分になる」という表現を直す説明用の編集例があります。記事で確認できるのは、そうした例を提示し、時間短縮は未測定と明記したことです。「実際の制作で確認時間が半分になった」という実績にはできません。
同じ文章でも、記事に載っていることと実測されたことは別です。この区別をAIに渡す材料にも残します。
分類したあと、どの主張を採用するか
分類表が埋まっても、その材料を全部本文に入れる必要はありません。この記事の目的は、AIに渡す根拠の扱いを決めることです。先ほどの「確認時間が半分」の例なら、測定をしていない事実を残し、時間短縮の結論は採用しません。一方、変更前後の文章を並べるという手順は、説明用の提案として載せられます。
ここで「半分」を「大幅に」へ弱めるだけでは、分類は直りません。根拠のない効果が本文に残るためです。書き方の問題と、材料の不足を分けて扱います。読者の判断に必要な材料が足りないときは追加確認へ戻り、記事の目的に不要な主張なら外す。この判断を、下書きの前に一行添えます。
出所と掲載可否を、材料の横に書く
材料を分けたら、各項目に「どこから来たか」と「公開してよいか」を添えます。自分のメモ、本人の発言、公式ページ、編集用の仮文は、同じ扱いにできません。
公開記事を参照した場合はURLと確認日を残します。手元の写真や発言には、提供者と掲載範囲を書きます。共有や掲載の許可が曖昧な素材は、外部AIへの入力や記事への掲載を保留して確認します。題材によっては、氏名や画面上の個人情報を外す必要もあります。
材料シートを一枚にして渡す
長い指示文より、本文で守ってほしい境界が見える形にします。以下は、この記事の制作内容を題材にした入力例です。実際にAIへ投入した記録や、出力の再現ではありません。
記事の仕事: 読者: 事実: 出所・確認日: 筆者の判断: 未確認: 掲載・共有条件: 条件: ・素材にない数字、体験、引用を追加しない。 ・事実と筆者の判断を混ぜない。 ・未確認事項は断定せず、確認待ちとして示す。 ・不足があれば本文を書き始めず、質問する。 まず見出し案を作り、各見出しに使う材料を示してください。
出所欄は、資料のURLだけでなく「どの段落や画面が、どの主張を支えるか」まで書くと照合できます。動画なら時刻、写真なら示したい箇所を添えます。これは記録欄の使い方の提案で、素材を新たに検証したという意味ではありません。
自分の記事に使うときは、記事の仕事、読者、事実、判断、未確認、出所、掲載条件を書き換えます。元資料を読んだうえで、空欄をAIに埋めさせないことが重要です。
下書きでは、まず「増えた事実」を探す
材料シートを渡しても、原稿が正確になる保証はありません。下書きが返ってきたら、言い回しより先に次を照合します。
- 発言の意味や、誰が言ったかが変わっていないか
- 渡していない数字・体験・引用が加わっていないか
- 「未確認」が、確定した事実として書かれていないか
- 自分の判断が、一般的な効果のように書かれていないか
- 写真・画面・引用の掲載条件を守っているか
確認できない箇所は原典に戻るか、その文を保留します。AIの回答を、出所の代わりにはしません。OpenAIも、生成された文章には誤った事実や引用が含まれ得るとして、重要な情報を信頼できる資料で確認するよう案内しています。
HITORIBAの見解
AIへの依頼文を長くすることが目的ではありません。何を根拠として使えるか、何が筆者の判断か、何をまだ書けないかを見えるようにすることが目的です。
次の記事では、手元の材料を三つに分け、出所と掲載可否を一行ずつ添えてみてください。材料が足りなければ、先に取材や確認へ戻れます。そろっていれば、下書きのどこを照合すべきかも分かります。
材料シートと図解は編集上の提案です。AIを使った時間短縮や記事成果を測定したものではありません。
2026年10月7日更新:分類後の採否判断と、主張に対応する出所の書き方を追記しました。
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HITORIBA